ゆるゆる映画雑記

書きたいと思ったとき適当に書く映画ブログ無責任系。基本的にネタバレです。ってかあらすじとか書かないので見る前に読んでもわけわかんないと思います。親切な作りじゃなくてごめんなさい。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

◇2015.3.13 @TOHOシネマズ流山おおたかの森

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<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|3月13日(金)ロードショー

 

≪一言コメント≫

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」。知られざる天才の偉業と運命の皮肉。ストーリーは壮大で、ヒューマニズムを中心に据えながら戦争の悲惨さや国家の冷徹さまで描き切っている。セリフも秀逸。脚本のうまさが光る。★★★★☆

 

≪まえがき≫

 ベネディクト・カンバーバッチエディ・レッドメイン。「イミテーション・ゲーム」と「博士と彼女のセオリー」。同じ英国人の俳優が、学者が主人公の史実もの作品で同日公開ガチンコ対決って、「すごいことになってんなーこれマジかー」って思ってました。先日TSUTAYAの棚をつらつら眺めてたらエディ・レッドメインがやったホーキング博士をカンバーバッチもBBCのドラマでやってたって知って、なんていうか因縁めいた2人ですね。話題性十分です。戦略的には日程バラすよりガチンコで当てたほうが相乗効果が望めるってことかもしれず、だとしたらやすやすと術中にはまってますw

 公開は金曜日だったのですが、ちょうどダンナも休暇だったので両方はしごして見てきました。公開日の初回に見るって人生で初めてかもしれないです。実力派で人気者のカンバーバッチ主演作ってこともあって、平日朝なのにそれなりに人が入っていました。やっぱシニア世代が大半でしたね。

 史実ものなんで話の流れはだいたい知っていましたが、そもそもつくばではやらないのでトレーラーも見ていませんし、自分から積極的に情報を入れることはしていません。エディ・レッドメインの「彼女と博士のセオリー」もそうなんですけどつくばは博士だらけの街なんで、こういう土地柄でこの映画かけないのはどうなのかなーとは思いましたね。いやぶっちゃけ学者は映画なんか見てる時間とかないのかもしれなさそうできてもたいした客入りは見込めないかもしれませんw

 

≪ネタバレ感想≫


「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」に関する感想・評価 / coco 映画レビュー

 

 いやーものすごい映画でした。まず最初に言いたいのは、とにかく視点が俯瞰的というか重層的だってことです。主人公アラン・チューリング“I”の絶対的な孤独。天才ゆえに誰にも理解されず、唯一の理解者であり愛情を捧げた友人を若くして亡くしています。そのチューリングエニグマの解読という難題に取り組むうちに徐々に他を受け入れていき、仲間という“We”を築いていく。さらに、第二次大戦中という時代のイギリスや連合国側の思惑や彼の名が歴史に埋もれることになる運命などなど、大局的で冷徹な“It”の流れ。私小説であり成長譚であり歴史秘話であるという、しかもどの要素も過不足なく描かれているというすごさ。歴史上の人物の伝記ものって、えてしてこじんまりまとまっていることが多いと思うんですけど、この映画はスケールが大きいですよね。こういうの好きなんです。

 主人公のチューリングは情熱的な人なのに論理的科学的アプローチしかできないっていう、いびつなキャラの持ち主です。頭良すぎてコミュ障、まあ天才の一つの類型だと思うんですけども、周囲にうまくなじめないしなじもうともしていない。この映画脚本がすばらしくって、印象的な会話がいっぱいあったんですけども、同僚からランチに誘われるシーンの主人公のコミュ障表現ったらすばらしかったですね。理系脳のイヤミ。「俺たちはこれからランチに行くけど」と言われたら、それは質問ではないから答えない。言外の意味とか与しないんです。あのやりとりは面白かったなー。

 でも“It”は、国家というか運命は、チューリングの才能をちゃんとわかっていた。エニグマに対抗するマシンを作るにはお金がかかるというと、軍は資金提供を拒否する。上に話したってしょうがないとわかるとチューリングは目的あるのみの空気読まない人だから何と上の上、チャーチル首相に手紙なんか書いちゃうww 手紙一本で予算がついてチームの責任者になっちゃうってすごいプレゼン能力だと思いますが、実際はチャーチルは手紙なんか読んでなくて内務省というかMI6がすべて理解し差配したってことなんでしょう。この映画のこういう“It”の大局観の描き方はとても面白くって、ソ連のダブルスパイを最初っからわかっててチームに入れてたことがわかるくだりあたりはですね、「MI6こええええ」って思いました。

 暗号解読に成功した後に訪れる運命の皮肉にも、主人公の報われなさに複雑な思いを抱くと思います。ドイツ軍に悟られないよう戦局を見ながら「生かす命」と「生かさない命」を計算する、その根底にある冷徹な大局観。映画では解読成功後の戦略を考えたのがチューリング本人ということになっていて、自分が巻き込まれる皮肉な運命を誰よりも理解していた天才の、天才ゆえの悲哀に心を揺さぶられました(このあたりのシーンは史実うんぬんより映画的な見せ方が必要で、脚本の腕の見せどころだと思うのですが、チームの一人の兄が乗っている船が危ないという分析から今すぐ軍に知らせる、いや知らせないのケンカに発展し、、という流れでコンパクトに無理なく、しかも印象的に状況を理解させていたと思います)。

 “We”の形成過程もいいです。仲間と一緒に何かをクリエイトする喜びと苦悩、それを共有し互いを理解しあうことで結ばれていく絆。仲間たちのキャラクター付けがすばらしくって、主人公の良き理解者で、外界をつなぐ橋渡しを買って出た女性ジョーン・クラークの現実的でしなやかな生き方ときたら! チューリングが同性愛者なのを隠して婚約したといったら、「それが何なの。それでもお互いを理解してれば楽しくやっていけるんじゃない」といい放ったときは大泣きしました。チューリングが辞めさせられそうになっとき「だったら自分も辞めます」ってヒュー・アレキサンダーがかばったときも泣いたです。映画を一緒にみたダンナはエニグマ解読のチームの一連のくだりは青春映画だと話してました。終戦後書類を燃やすシーンが「キャンプファイヤーだ、あれが青春の終わりなんだ」と。まったく同感です。

 いろいろだらだら書いてますが、やっぱりこの作品のよさは脚本によるところが大きくて、脚色を担当したグレアム・ムーアのアカデミー脚色賞の受賞スピーチがこの作品のスピリットを表現していると思うんです。壮絶ないじめにあった。同性愛者である。女性である。社会に疎外感を持っていたり、あるいは不当に傷つけられたり苦しめられている人に「がんばれ」「負けるな」っていってる。失意のチューリングをジョーンが励ます「あなたが変わり者だから、世界はすばらしい」というセリフの壮大なヒューマニズム。傷つき苦しみながら毎日を懸命に生きるすべての人へのメッセージです。あなたはゲイだからすばらしい、あなたは女性だからすばらしいんです。

 わたしあんまりカンバーバッチのこと知りませんが、この作品が彼の代表作となることは衆目の一致するところかと思います。「SHERLOCK」の延長線上にありそうな役柄は得意分野といえば得意分野でしょうが、繊細な演技が圧倒的でした。アカデミー主演男優賞エディ・レッドメインの手に渡りましたが(マイケル・キートンという大本命もいましたが)、作品としてはこっちの方が断然面白く(一概に比べられませんが。エディのファンの方ごめんなさい)、この作品でカンバーバッチがとってもよかったんだよなーとマジで思います。ってかカンバーバッチすばらしいです。英国の宝ですね。ばんざい!!

 

≪参考≫

本作でアカデミー脚色賞をとったグレアム・ムーアのスピーチ

アカデミー賞「脚色賞」に輝いたグレアム・ムーア、感動の受賞スピーチが話題に | GENXY

 

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